なんか、家を買うことを考えるとめちゃくちゃに憂鬱になる。特に、買ったあと、何らかのリフォームをしなければならない中古家屋は、相当に憂鬱になる。しかし、集合住宅はやばいしなぁ。一軒家のレンタルは、高い。きちがい親父が、ネズミを入れなければ、ほこりにやばいタイプのダニがはいってることもなかったのになぁ。じつは、ダニなのかなんなのかわからないけど、シミになるようなさし方をするやつがいる。小さな範囲だけど、刺青のように、細かく刺すのだ。手の甲に、消えないしみみたいなものが数年前にできてしまった。だいたい、5ミリぐらいの大きさなんだけど、消えない。ものすごく、憂鬱になる。普通にかさぶたになってはがれればいいのだけど、そういうふうにはならない。いやなんだよな。
頑固に、ネズミ対策工事に反対した。頑固に、酒糟のついた魚を1日に23時間ぐらい、テーブルの上に置くことにこだわった。
で、新たに刺されると、過去、刺されて消えていないやつが、気になったりする。
それから、このさきの世界なのだ。そりゃ、すごい医療技術が登場すればいいけど……。いままでよりも、多くの人が死ぬだろう。はるかに多くの人が死んでいく。まあ、死ぬことを考えると、手の甲のシミなんてどうでもいいわけだけど、ぼくの手は、うつくしかったんだよ。それが……。
さみしいから……という理由で、だれかかわいい人と、一緒に住んだとする。それでうまくいくかというと、うまくいきそうもないんだよな。
けど、夜、引っ越しのことを考えたら、胸が苦しくなって、ものすごく憂鬱になった。「もう、いやだな」というのがある。きちがい親父の病院手続き、ネズミ業者とのやり取り、きちがい親父の老人施設手続き……。そのたもろもろ、長期騒音でこわれた体でやるのは、つらかった。
いま、夜が明けて、どうにかなったけど、切羽詰まったものを感じた。もう、リフォームは、嫌なんだよ。カネがもっとあれば、最初からきれいなやつをかえるんだけどな。相当に高い。なんか本当に、全部がいやなのである。特に、肌がきたなくなるのは、いやなのである。 なんだろうが、いやなんだよ。
けど、死というもの考えると、虫刺されのシミなんてどうでもいいということになるだろう。俺は、糖尿病予備軍かもしれないけど、これも、きちがい親父が絡んでいるのだ。相手が言っていることが、一切合切わからないやつってなんなんだよ。「やるな」と言ったことを、ずっとやり続ける。おかあさんが死んだあとも、俺が引き続き、買い物をしていればよかった。おかあさんが死んでしまって、どうしても、買い物に行く元気がなくなってしまったんだよな。「揚げ物を買ってくるな」とどれだけ言っても、揚げ物を買ってくる。頭がおかしい。しかも、あれだけ、「揚げ物を買わないでくれ」と言っているのに、俺のために買っているらしく、自分は食わないのだ。そうすると、どんどん、揚げ物が冷蔵庫の中にたまっていくのである。くさってしまうのである。くさっても、くさっても、揚げ物を買ってくるのである。 冷蔵庫が揚げ物でいっぱいになっても、揚げ物を買ってくる。止まらない。しかも、ほんとうに、俺のために買っている」という気持があるらしいのだ。本人は、まったく揚げ物を食べない。あれだけ、「揚げ物は買ってくるな」と言っているのに。1日に何十回も言っているのに……。買い物を任せたら、ひどい目にあった。簡単な買い物すらできないのだ。かならず、トラブルを起こす。けっきょく、俺が買い物をすることにしたけど、そのあいだ、けっこう、揚げ物を食べた。食品をくさらせてしまうことに、当時のぼくは、抵抗があった。しかも、「もう、俺の分は俺が買ってくるから俺の分は買ってくるな」というとを言ったのに、これも、止まらないのだ。